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2005/04/01

新人研修この10年

4月1日、抜けるような青い空。
昨日の色々な別れを引きずりながら昨日と同じように出社する僕には少し哀しいくらいの青空だったけど、でも人生の新しいステージに立つ人、新しいステップを踏み出す人が多いこの日は快晴が良いよね。

冬が長かったせいか強く感じる春の光が、みんなの門出を祝っているように感じたのは僕だけじゃないと思う。

さて、今日は入社式と新人導入研修の初日。ある教育関係の雑誌に「教育研修部門の晴れ舞台」と表現されていたけど、晴れ舞台かどうかは別として一年で最もみんなの力を問われる日でもある。

そんな日、新人研修での事務局担当でなく、4月の間は講師としての当番もない僕はず~っとオフィスにいた。個人情報保護法対応の最後の仕上げの細々とした仕事をしながら、導入研修のトラブルに備えてスタンバイしていた。

東京海上日動は衛星放送のシステムを持っていて、本店での入社式や新人研修の講義を全国の支店に配信し、地域型新人(各支店で採用)は支店でTVを通じて研修を受ける。

今年は殆どノートラブルで(ちょっとだけ送出電波が乱れたみたいだけど、一説によると飛行船の影響だったとか・・・本当かな?)スタンバイしていた僕の出番は無しだった。

ふと10年前のことを思い出した。

10年前の新人導入研修。それはHRAが人事部門から独立して設立されて最初の、そして僕にとってもHRAに出向して最初の導入研修だった。

なおかつ、この導入研修はHRAにとっても東京海上(当時)にとってもエポックメイキングなイベントだった。研修の場で始めてPowerPointが使われた日だったからだ。

まだ、PowerPoint(どころかパソコン)はそれほど普及していた訳ではなく(Windows95は前年に発売)、特に企業・学校を問わず教育用途ではそれほど使われていなかった。

前年の12月に「東京海上のプレゼンをビジュアル化するために、HRAの全講師が新人導入研修でPowerPointを使い、東京海上社内にインパクトを与える」ということが決まり、そのためのプロジェクトを僕が担当することになった。僕にとってはシスアドとしての最初の大仕事だったし、教育メディアとの最初の関わりでもあった。

プロジェクトは14人いた講師陣全員分のパソコンを購入することから始まった。予算はごく限られていたため、秋葉原のT-ZONEのアウトレットショップで型落ち直後の富士通Deskpower14台と実際に講義で使うためのThinkPad530を2台、かなり値引きしてもらって買った。

それらのパソコンはWindows3.1版だったため、納入直後にWindows95にアップグレードし、MS-Office95をインストールした。

それからPowerPointを使い始めた。
僕も使い方を全然知らなかったのでまずパソコン教室に行き使い方を習い、衛星放送の画面にのせやすいPowerPointの画面のデザインや色づかいを放送スタッフと模索し、それを講師陣に伝えた。

講師陣からはパソコンの使い方やPowerPointの使い方を毎日質問された。僕もWindows95やPowerPointは良くわからなかった(DOSとWindows3.1しか使ったことが無かった)ので、質問される度に必死に調べたり、「明日までに答えます」といって夜遅くまで勉強して、何とかこなしていった。

講師の中には「俺はパソコンなんか使わん」という人がいて、説得しなくちゃいけなかった。逆にパソコンにはまって講義の中身の準備が進まない人も出てきたので、凝りすぎないように誘導しなくちゃいけないこともあった。

4月1日も大変だった。

パソコンの画面をコンバータを通してTV用の映像として流すのだが、パソコンはフリーズするは、コンバータは動作不良になるは、パソコンの画面と講師の顔を撮すカメラの切り替えはうまくいかないは・・・。最初の3日間は社内をかけずり回ってヘトヘトになった。

おまけにパソコンの台数が限られていたため、予備のノートパソコンを本店(丸の内)から使うときだけ千駄ヶ谷にある研修所に運び、研修所で使い終わったらまた本店に持って帰るという運び屋もやった。

無我夢中の新人研修だったけど、何とか講師全員がPowerPointを使って講義を行った。東京海上社内でのインパクトはかなりのものだった。新人・新人以外の社員を問わず、PowerPointの画面をはじめて見た人が多かったし、しかも、それを使っている講師の殆どは50歳以上だったからだ。若い社員は相当刺激を受けたそうだ。

10年経った。

うちの講師に限らず、みんなプレゼンでは当たり前のようにパソコンやPowerPointと使うようになった。そして最初に書いたように関係者みんながそういった研修に慣れてきたし、パソコンをはじめとする機材の充実もあり、僕が社内をかけずり回ることも無い。その意味ではとても進歩したし、その進歩を誇りに思う。

だけど、教育として、研修として本当に進歩しているだろうか?メディア・表現としてはどうだろう?新人から見てどうかな?ってふと思った。

確かに講義はビジュアル化できた。日頃講師をしない社員までもがPowerPointを使って講義をしている。
それは今や、企業でも学校でも当たり前の姿だ。

それだけに、もしかしたら10年前の方が、受講者もPowerPointを見たことが無かったであろう分だけ刺激的で新鮮な講義だったかもしれない。少なくとも先進的には見えただろう。逆に、デジタルメディアに囲まれて育った今の若い人たちには会社のオジサン・オバサン達の作るPowerPointの画面なんかはかったるくて、イケてないものに見えるかもしれない。

もちろん、研修や教育が刺激的でさえあれば、あるいは先進的でさえあれば良いという訳じゃない。だけど、社員として、社会人としての新しい一歩を踏み出す新入社員には、良い意味で「やっぱり社会って、会社ってすごいなぁ」って思ってもらえるような研修や講義を提供したい。

その想いは10年前も今も変わらず、新人の研修に関わる誰もが持っているはずだ。
だとすると、新人研修は、常にその時点の「今」に相応しいもの、その時点のワカモノに伝わるものでなければならないはずだ。

おそらく1995年当時は、まだ普及していないパソコンやPowerPointを使うことで、それが出来ていたはずだ。
では2005年の今年はどうだろう。もし出来ていないとすれば、僕らは何をすべきだろう。

インストラクショナル・デザインやインストラクション・スキル、画面のデザイン・・・・色々なことを思いついたけど、その前提として、時代の息づかいを感じているだろうか?そしてイマドキのワカモノ達が育ってきた環境が見えているだろうか?ってことがちょっと心配になった。

幸いここ数年、SLCや岩手県立大や学会などで学生・院生の皆さんと一緒に過ごす時間が長いのが救いではあるけど・・・自信は無いなぁ。

トラブルが起きないことを祈りつつ、オフィスでスタンバイし続けた今日一日。この10年を振り返りながら、そんなことを考えていた。そういえばあのころの僕は33歳、今はもう43歳なんだよね・・・・。

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コメント

北村さん、コメントありがとうございます。

>それと、個々に持っている能力に気づかせてあげる、のは可能だと思いますが新人には無理だと思っています。

あ、いや、いわゆるオシゴトの能力じゃなくて、自分が何が好きで何が得意かとか、そんなレベルです。本当はそんなの就職前に自分で整理して、それをもとに会社を決めて面接でアピールして入社してくるのが筋なんでしょうけど、昨今はどうもその辺から面倒見てやらないとなかなか力を発揮してくれないようで...

>「人の有能さ=ある状況の中で適切な言動をとることができるかこと」という考えがあり、私もその立場を取っています。

ムムム..これに関してはちょっと「異議アリ!」なのですが、ネット上でやらかすとうまく伝わらないおそれがあるので、今度飲みに行った時にでも(^^)/

投稿: | 2005/04/03 11:32

kusumotoさん、コメントありがとうございます。

プレゼンにおけるPowerPointの功罪のうち、「罪」はあまり語られないですよね。

僕個人は、PowerPointが素晴らしいツールなだけに、無批判に使ってしまい、ツールに振り回される、あるいはツールを使うことで満足したりする(ツール利用の自己目的化)が問題だと思っています。

PowerPointの「功」の方も、まだまだ語られていないものがある気がします。

すぐにビジュアルなプレゼン、ということを言われますがこれはほんの一部で、僕にとってはプレゼンに向けた思考プロセスや準備の可視化も大きいと思っています。そこまでPowerPointの意味を考えるかどうかは大きな分かれ目かもしれません。

いずれにせよ、何より問題なのは、「プレゼン」というものをビジネスや一連の仕事の重要な要素とはみなさず、「おまけ」程度に考えている人が多いことじゃないかと思っています。

投稿: 北村 士朗 | 2005/04/03 10:19

HRAにPPTが導入されて10年ですか。つまり会社の歴史と同じですな。今度のプレゼン研修のことを考えながら最近思うのは、PPTの次に来るものは何か、PPTのプレゼンを今の延長線で考えて良いものかどうかということ。まだPPTすら使えない某社の社員が沢山いる状況ではあるけれど、本当に「伝わる」プレゼンのためには、PPTの多用による効果というものに期待をかけすぎてはいけないのではないかということ。やはり、プレゼンのレベルに大きな差が出てきている現状において、どこに焦点を合わせるべきか、これ永遠の課題かも。。

投稿: kusumoto | 2005/04/02 23:06

司さん いつもコメントありがとうございます。

新人研修は言うまでもなく、新入社員が社会や会社に順応していくためのレディネスを作ることが目的です。

そこでは、知識付与やしつけと同じくらい、新入社員、新社会人に対する会社・社会のメッセージだと思っています。

司さんの言うとおり、イマドキの新社会人は社会や会社にそれほど大きな期待をしていないかもしれません。でも多少のワクワクとけっこうなドキドキは持っているんじゃないかと。だったらそれを増幅してあげたいと思います。

それと、個々に持っている能力に気づかせてあげる、のは可能だと思いますが新人には無理だと思っています。

「人の有能さ=ある状況の中で適切な言動をとることができるかこと」という考えがあり、私もその立場を取っています。

ですから、その人の本当の有能さはその人が生きていく環境の中で、周囲や社会との関わりの中ではじめて明らかになるのだろうと考えています。

だとすれば、「研修」といったバーチャルな環境下よりは、職場や生活の場といったリアルな環境での気付きが大事だろうと。

但し、新人以外であれば、職場や生活の場から少しはなれて自分や自分を取り巻く環境を、いつもと違う視点や視座で見直すことで気付きを得られるかもしれません。そういった研修は可能でしょうね。

投稿: 北村 士朗 | 2005/04/02 22:04

「期待と不安を胸に」なんてよく言うけど、はっきりいって今の新人は会社生活にあまり期待してないんじゃないかって気がします。

「どうしてもF1の開発に携わりたくってホンダに入った」とか、「人のものを分捕るのが大好きなので生扉に入った(^^;)」といった目的意識が明確なケースは別として、世の中リストラ、過剰労働、ねじ曲がった成果主義と、新聞読んでてもいいことはあまり聞こえてきませんからね。それがNEATを生んでたりする。

多くの学生は、会社に入って「ああ、これで楽しい生活も終わりだ」と思ってるだろうから、「ちっちっ、青いぜキミたち、お楽しみはこれからだよ」ってメッセージが伝わる新人研修があるといいですね。お辞儀の角度から教えるような研修もいまだあるなかで、「やっぱり社会って、会社ってすごいなぁって思ってもらえるような研修」という北村さんのコンセプトはすばらしいです。

もう一つ加えるとしたら、それぞれの新人が個々に持っている能力に気づかせてあげる研修プログラムってないですかね。「あれ?自分って結構すごいんだ。これって仕事に生かせるかもしれない」って感じてもらえば、会社生活もワクワクするものになるでしょう。

投稿: | 2005/04/02 20:09

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