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2005/04/26

eラーニングのオープンソース

昨日、教育システム情報学会のeラーニング技術特別委員会シンポジュームがあった。テーマは「eラーニングのオープンソース」。オープンソースの動向を知り、実際に活用されている方々の事例を聞くというシンポジュームだ。

基調講演は産総研(産業技術総合研究所)の田代秀一主任研究員「オープンソースソフトウエア(OSS)の現状と将来」。

OSSは
・ソフトウエアのソースコードを入手できる
・プログラムを改良できる
・プログラムのコピーを自由に作り、それを配布できる
ソフトウエアで、OSS自体がソフトウエア技術ではなく、「ライセンスによって担保されたソフトウエアの開発・流通・利用構造」。Linuxはその代表格だ。

田代さんのプレゼンの中で、コンピュータやネットワーク、家電、組み込み機器が満ちあふれる現代社会において、ソフトウエアも社会基盤であり、社会基盤としては「安全性」「相互運用性」が求められる。その実現のためには「特定ベンダ非依存」「プラットフォーム非依存」「情報公開性」が重要となるが、OSSに基盤を置くのはひとつの重要な解、だという点が印象的だった。

確かに、eラーニングが社会に浸透し社会基盤になっていくためには、基盤としての要件を満たしていく必要があるだろう。(OSSがその解であるかは置いておいても)

また、田代さんはOSSのように「中身が見えるもの」は人材育成につながる、といった非常に重要な示唆をされていた。確かにブラックボックスのメンテナンスだけでは、本当の意味でのエンジニアは育たないだろうし、逆にオープンなものを見て、いじって、改善していくことで、創造的なエンジニアやユーザが育っていくと思う。

eラーニングの世界でもオープンなものが色々でてきて、それを研究したり、使ったり、改善したりする人、ビジネスにする人、あるいは研究して論文にする人たちが増えてくることで、優れたエンジニアやクリエイティブな技術・アイディアが沢山出てくると良いよね。

後半は岩手県立大学の鈴木先生をモデレータに、実際にオープンソースなLMS(Learning Management System 学習者や学習プロセス、コンテンツを管理・運営するためのシステム0をお使いになっている大学の先生方とのパネル。

九州工業大学の西野先生はトロント大学で開発されているAtutorやカーティン工科大学で開発されているMoodleの利用実例を紹介されていた。いわば「すでにあるOSSの活用」。

九州工業大学では、キャンパスが北九州と飯塚に分かれており(車で一時間くらいの距離)、その間の遠隔授業の必要性からeラーニングをはじめたとのこと。

「お金が無かったのでオープンソースで」とおっしゃったが、確かに色々なOSSの中から自分たちの身の丈にあったものを選び、それを使っていくというのは良い選択肢であるように思えた。ゼロからつくるよりははるかに効率が良いし、ワールドワイドには既にコミュニティがあるというのは強い。もちろん、こういったものを自分達で運用し、いじっていく技術力が前提になるけど。


関西大学の冬木先生は自ら開発された「授業支援型e-LearingシステムCEAS(シーズ)」の事例をご紹介。コンセプトは「いろいろな教育的活動のコーディネートシステム」。授業と学習のサイクルを前提とする教育方法の実施を支援する枠組みを作り、教育の質の向上と教員の負担軽減を図ることを目指して開発されたそうだ。

授業だけでは授業内容を理解できない学生さんたちに、授業に興味をもってもらうこと、そしてそれを先生方に効率よく(従来の授業に対して過重な手間にならないように)行ってもらうことを考えた、という。

こちらは、いわば「OSSを作って活用」。自分たち(関西大学+パナソニックラーニングシステムズのコラボレーション)で開発されたものをOSSとしてプログラムやマニュアルなどを無償で提供している。→CEASコミュニティページ

CEASは実際に使われるユーザ(先生方)が開発されているのが強みで、「CEASが想定するモデルと、教育実施のプロセスモデルが一致している」ため、操作が分かりやすいという。

こういった風にOSSをユーザそのもの、あるいはユーザと近いところで開発し、コミュニティを形成しながら、改善をしていく、というのは良いモデルであるように思われた。今後のコミュニティ形成を期待したい。


慶応大学の福原美三先生(この4月にNTT-Xから慶應大学に移られたとのこと)はデジタルメディアコンテンツ統合研究機構(DMC)についての発表。DMCは、「デジタルコンテキスト」contextual digital content (デジタルコンテンツ素材を利用目的に沿って生成・編集・加工・統合することにより デザインされる、シナリオをもったデジタルコンテンツ)の創造を推進し、 他機関との連携による研究開発・国際流通促進・人材育成を行なう組織。

ここで使っているLMSはその名もずばり!「OSS LMS」(一般名詞じゃないか、という声もあるが・・・)。
NTT-Xで開発されたX-CalatIIのOSS版だ。いわば「企業発OSSの活用」。

まずは理工学部のリメディアル教材。数学、物理、科学、外国語の講義をeラーニング化し、再履修者などに提供しているとのこと。

こちらは4月から始まったばかりということで、今後に注目したい。

こんなふうに「すでにあるOSS」「自分で作ったOSS」「企業発OSS」という違いがある3校。モデレータの鈴木先生は「自分に合わない、いわば『つるし』のLMSではなく、OSSで自分にフィットしたものを導入する」のがポイントという整理をされていた。

確かに、OSSは導入や試用のコストが低い(その後のランニングコストが安い、とは言い切れないにせよ)ので、ある程度の技術力のある組織(特に大学、研究機関、IT関係の企業)が身の丈にあったものを選び、自分たちに合わせて使っていくには良いかもしれない。

ただし、(僕のように)技術力の無い者にとっては、敷居が高いのも確か。それこそLinuxみたいにコミュニティなどを通じ、人材が育成され、ビジネスが構築され、技術力の無いユーザにも選択肢が増えるといいな、って思った。

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