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2005/05/14

海上自衛隊見学(1) 充実した幹部育成

先日、SEA(ソフトウェア技術者協会)の教育分科会(sigedu:Special Interest Group on Education)で、海上自衛隊 第2術科学校通称「2術校」を見学させていただいた。

海上自衛隊では任務遂行に必要な航海、飛行、兵器運用などの技能を術科と呼んでおり、4つある術科学校でそれらを専門的に教育している。2術校は、機関、電機、応急工作等並びに情報、技術、電子計算機及び外国語といった部門のエキスパートを養成する学校だ。

見学全体を通しての印象は、「本当に素晴らしい教育をしている」の一言に尽きる。
教育に対する責任感と揺らぎ無い自信。確固たるポリシー。そしてそれを実現する伝統が培った教育の手法・内容と充実した設備を目の当たりにして、圧倒されてきた。

見学は、まず最初に副校長の武田一等海佐から、海自の教育や2術校の概要についてプレゼンテーションしていただいた。(とても分かりやすく、また堂々とした素晴らしいプレゼンテーションだった。)

お話の内容の中で印象に残った点をいくつか。
まずは幹部育成を中心に。

1.多様な人材の採用と育成

自衛隊の幹部(候補生)は防衛大学出身者だけだと思っていたのだが、大きな勘違い。 海自では防衛大と一般大学(防衛大以外)が半々だそうだ。 ちなみに武田さんも工学系の一般大学の出身だそうだ。

幹部教育としては、入隊直後の「幹部候補生課程」から始まる。「防衛大と一般大学とで、保有する知識やスキルも違い、教育の前提が決めにくいのでは?」という質問をしたところ、「確かに体力面、軍事知識では一般大学卒は防衛大卒に最初は太刀打ちできない。逆に数学・物理といった一般的な領域は一般大卒でも太刀打ちできた。同じ教育を受けながらその差は収斂していく。両方の大学から多様な人材が入隊することに大きな価値がある。」というお答えだった。

2.意図的なジョブローテーションの中で幹部は育つ

幹部育成では、様々な職域(機関、砲術・・・・)での学校での教育→実務(乗船)→次の分野の教育→・・・といったジョブローテーションを繰り返すし、様々な分野について知っていくという。例えば艦長になった場合、艦内のあらゆる業務を知っておくことが求められる。「現場を知らない上官に部下は命を預けられない」からだ。

と同時に、それぞれの現場で与えられた分野のエキスパティーズを高めながら、マネジメント(どうやってセクションの実力を発揮するか、人事・教育をどうするか)を学んでいくという。そして現場でキャリアを重ねた後「指揮幕僚課程」に進み、幕僚としての知識・スキルを磨き、さらに昇進していく。

「幹部たるもの何を知り、何を出来なくてはいけないか」という職務定義が、ポリシーや伝統の中で明確化されていった成果なのだろう。この点は民間企業としては大いに見習わなければならないと感じた。

3.充実したOFF-JT

海自の教育は学校での長期間(2ヶ月~1年程度)のOFF-JTと、現場での訓練(OJT)の繰り返しである。 OFF-JTでその仕事ができるように徹底的に訓練した後、現場でさらに訓練していくことになる。 確かに、現場に出れば有事もありえるので、任務が遂行できることは必須だ。

それでも現場での訓練も重要なのは、習得した知識やスキルの維持・向上、現場での状況対応力向上、先輩(それぞれの現場ですごい職能を持った(ノンキャリアの)隊員の仕事がいるそうだ・・・)の知識・技術の伝承なのだろう。この点は、各訓練現場の教官のお話からひしひしと感じられた。

まずこの点が素晴らしいと思った。民間企業ではもっと短期間の(場合によっては申し訳程度の)OFF-JTがOJTの前や最中に行われるだけ、というケースが多かろう。もちろん、長いOFF-JTが必要な業務だけじゃないだろうし、OFF-JTでは学べない領域が多いとは思うけど、それにしてもOJTに安易に依存しOFF-JTがなおざりにされているのではないだろうか?と思った。

また、訓練とはいえ「次は頑張ります」を認めないという。非常時に出せる力は7~8割。だとすれば、いつも自分の力を出し切てなければならない。それを徹底的に訓練するという。


まだまだ沢山の参考になるお話、興味深いお話を聞くことができたが、今日はこのへんで。
(明日以降に続く)

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コメント

正確に言うと、学校・教育部隊でのoff-jt、見習い時代のOJT、及び第一線での実務の三段階に分けられます。OJTは指導項目や採点基準がちゃんとしていて、それを合格する必要があります。自動車教習の路上検定に似ています。やらせっぱなしのOJTではありません。第一線での実務の時は必要に応じて指導しますが「教えざるは罪」という諺があり、何でも見逃さずに口うるさく是正します。

投稿: 君島浩 | 2005/05/16 10:02

この種の話って、かつては雑誌「プレジデント」が大好なネタで、電車の吊り広告を見ていても「海軍兵学校における人材育成」とか、「インパール作戦に見る失敗の本質」とか、お前らいつまで戦争してるつもりだ~みたいな記事が多かったんですが、最近「これが同じ雑誌か?」と思うぐらい様変わりしましたね。

「海上自衛隊の~」なんて言っただけで眉をひそめる人もいるでしょうけど、要は優れた教育ノウハウというのはいろんなところに散らばっている、っていうことでしょうか。

投稿: | 2005/05/15 22:58

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