2006/09/30

文珍師匠の弟子育て

9/27に自宅でテレビをつけっぱなしにしながら仕事をしていたら、のNHKの番組「生活ほっとモーニング」に桂文珍師匠が出演していて、思わず引き込まれてしまった。(そもそも僕は文珍師匠のファン)

放送内容:この人にトキメキっ! 落語家 桂文珍

上方落語の話、自身と落語の関係などとても興味深い話しが続いたが、仕事柄「弟子を育てる」という話題で思わず反応してしまった。文珍師匠は弟子や吉本興業の担当者に対して厳しいという定評がある。

まず、文珍師匠が言うには、芸人というのはクレープのような薄皮を一枚一枚はいでいくように、芸の細部について突き詰めていくものだという。そしてそのことを実際に弟子にも伝えようとしている。

弟子の楽珍さんは弟子入りして25年。文珍師匠もその実力は認めているが、まだ一人前としては扱っていない。

楽珍さんは「何度も辞めたくなった」という。文珍師匠はとにかく厳しく、「おしぼりでも冬・夏は温度が違うだろう。お客さんの気持ちになって考えなくては。弟子は師匠の気持ちにならなくては。」と言って、ちょっとした失敗でも許してくれないという。

実際にどのようなやりとりがされているかも紹介された。

楽珍さんが前座を務める間、文珍師匠は袖で聞いている。ネタは上方落語の「宿替え」。
「これ、面白いな」と笑っている。「いいねぇ、あれいいねぇ」楽しそうに見ていたり、うなずいていたりする。たまには大笑いさえ・・・。
ところがある箇所に来て急に「ああ、ここが違うな」と厳しい顔になった。

高座に出る文珍師匠は、帰ってきた楽珍さんに「後で言う」と冷たく言い残す。

文珍師匠が高座を終え楽屋に帰ってくる。
「楽珍なぁ、宿替えな、あれ難しいな。細ひもでくくった後で、でもぱ~っと離してしまうと、そこまでの面白さが生きない。リアリティが残らない。折角のそこまでを活かさなくちゃ。」といった話をする。

あれだけ袖で笑っていたのに、一言もほめない。
だけど僕が感じたのは「折角」という言葉が短い間に3回は出てきたこと。
多分、文珍師匠師弟の間ではこの「折角」というのは、その部分は出来ている、ということを認める、ある種のほめ言葉なんじゃないかと思った。このあたりに文珍師匠の弟子の育て方のうまさの秘密がありそうだ。

文珍師匠は言う。「具体的に言ってやらなくちゃ。前に物語を進めようと焦って芸が乱雑になる。そこが言いたい。」「何もしなくても伸びる、ほめると伸びる、叱ると伸びる。色々な子がいる。難しいよね。」

文珍師匠は、笑福亭鶴瓶桂南光両師匠と3人で「しごきの会」という若手落語家の育成の場を年4回設け、なんとこの3人で前座をやって、若手にトリをやらている。

「良い意味のプレッシャーを与えて、一皮むきたい。だらだらやるのが一番いけない。」と文珍師匠は言う。

「落語は競争。なんばグランド花月で、他のジャンルの芸(ケニアのダンスとかまで)の後で落語の面白さに気付いてもらわなくてはならなかった。客は笑いに来ている。落語を聞きに来ているわけではない。『これでどうだ!』というところまで頑張ってきた。」「一番大切なのはお客様のお好みの調子に合わせ、そのテイストのものを出さなくては行けない。たとえば寿司屋でお任せ、と言われたときに、すし職人は最初の品の様子を見てその後を合わせていく。そのとき持ちネタが多くないとお客様に合わせられない。スポーツと芸事には競争しかない。」

教育、研修、インストラクショナルデザインの世界も一緒だよな、と思った。

学習という面でもうひとつ。
今度、大阪に出来た定席天満天神繁昌亭には楽屋はひとつしか作らなかったという。そこに大看板から若手までが一緒になって過ごし、伝承の場にしていこうという。まさに学習環境デザインだよね。

芸事の弟子育成から学ぶことは多そうだ。

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2005/05/12

無我夢中の芸は

竹内結子との関係をインタビューされる中村獅童を見て、新春浅草歌舞伎の稽古をする獅童をレポートしていたテレビ番組を思い出した。

勘九郎は獅童を可愛がっていて、よく稽古を見にくる。この日も舞台稽古を勘九郎が見に来て、稽古の後で獅童と話をした。勘九郎の第一声は「あんたの芝居は無我夢中だね」。僕は次にに誉め言葉が来ると思ったが、そうではなかった。「無我夢中の芝居じゃ全然ダメだよ。お客さんを動かせないよ」というかなり厳しい叱責だった。

勘九郎が言いたかったのは「無我夢中じゃお客さんが見えない。お客さんを見て芝居をしなくちゃ、お客さんに伝わらないよ」ということだった。実際、獅童はそのときちょっとスランプに陥っていて、スランプの分、余計に「無我夢中」になっていたのだった。この勘九郎の一言で獅童の芝居が変わり、公演は成功した。

この勘九郎と獅童のやりとりには結構感じるものがあって、以来、僕もインストラクターとして、あるいはプレゼンをするときに「無我夢中にならないこと」に自分に言い聞かせるようにしている。少なくともそう自分に言い聞かせることで「無我夢中である自分に酔う」ことは無くなると思っている。

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2005/02/06

能楽師の内弟子(2)芸は自分で吸収する

内弟子レポートでもう一つ印象的だったことは技術的なものの学習でした。

よく「芸は盗むもの」と言いますが、梅若 六郎さんのポリシーも「芸は自分で吸収するもの」。内弟子さん達に技術的な指導はされないそうです。
で、どうやって学習するかというと、内弟子さんたちは六郎さんがご自分で稽古をされている声を障子越しに必死に聞いていました。内弟子さんたちのポーズは障子に向かってはすに構え、まるで向こうの話を盗み聞きをしているようでした(^-^;))

こういう学習って、教育学ではどのように表現・説明できるのでしょうね?
「観察学習」とかでしょうか?
ウェンガーたちが言う「徒弟制度」とも違う気がするし・・・・。
誰か教えて下さい(^-^;)

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能楽師の内弟子(1)食事の準備も学習のうち

今朝(2005/2/6)のNHK「おはよう日本」で、女性の能楽師の話題がありました。
今まで能楽師は男性ばかりだったのですが、最近は能楽師をめざす女性も多く、今度、横浜で「女性のための能」を女性だけで演じることになったそうです。

今朝の番組では観世流能楽師(シテ方の梅若家当主)の梅若六郎さんの内弟子になったある女性がレポートされていました。「やる気のある若者には男女を問わず門戸を開く」という方針のもと内弟子を選んだところ、4人の内弟子中3人が女性になったそうです。

内弟子は5年以上師匠の家に住み込みで修行をする厳しい制度(教育システム)です。
レポートは食事の準備のシーンから始まりました。

広い台所で内弟子さんたちが食事の準備をしていますが、この食事の準備は単に精神修養のためでも、労働力の安い「お手伝いさん」としてのものではありませんでした。(その側面もあるかもしれないけど)

食事の準備で気を配るのは「盛りつけ」。「盛りつけを美しくすることで、能に必要な美意識を得る」という目標も手段もはっきりした学習でした。

食事はそう豪華なものではありませんが、一皿一皿がきれいに盛りつけられた上、お盆の中に6つの小皿が綺麗に配置されていました。

そして評価は内弟子の皆さんの日常生活での指導にあたる六郎さんの奥様。この日の盛りつけは上手くいったようで、奥さんも「きれいに盛りつけられたわね」と内弟子さんを誉めていらっしゃいました。

奥様は日頃の所作については厳しくチェックし、特に女性には男性以上に厳しく指導をするそうです。
「芸の隠れた部分、心の部分を磨いてあげたい。特にこういった部分は女性ならではのものがあるはず」というのが奥様のお考えだということでした。

ここから学んだことは3つ。
1.すぐれたOJTには明確な目標(目的)があり、手段として妥当であり、評価システムもできていること。
2.情意領域を伸ばすのに日常生活からの学びは大きく、重要であること。(内弟子での生活はその点がしっかりデザインされているようですね)
3.(これは自分のことですが)インストラクターとして、あるいはコンテンツ制作者としても、日頃の生活をひとつひとつ大事にしていかないと、「芸」を伸ばすことはできない。

伝統芸能から学ぶことは多いですね。

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